【8】等電子密度表面上の静電ポテンシャルの三次元可視化

〜等電子密度表面上を静電ポテンシャルの大小により別の色に彩色します。〜
  ・等電子密度表面を静電ポテンシャル値の大小により彩色した図は、
   分子(錯体や有機金属分子)の中の電荷の偏りを一目瞭然で見て取ることができます。

  ・電気陰性度[electronegativity](=結合している原子が電子を引きつける能力)の理解にも最適です。

  ・1H-NMRの化学シフトの定性的理解にも役立ちます。

  ・電子が少ない(電気陰性度の小さい)原子の近くでは、等電子密度表面は青く表示されます。

  ・電子が多い(電気陰性度の大きい)原子の近くでは、等電子密度表面は赤く表示されます。


◎1.VENUS\Programs\VEND.exeをクリックして、VENDを起動します。

VEND: Menu
Dialog
Graphics
VEND

の4つのウィンドウが立ち上がります。
◎2.VEND: Menu の 【Open】をクリックし、
Format: のプルダウンメニューで、
上から5行目の【SCAT (*.scat, *.sca)】を選択、
【Browse...】をクリックし、
ファイルの場所(I): にc:\dvxa\calc\○○を選んで、
電子密度ファイル、CHG3D.scaを選択し、
【開く(O)】をクリックします。
◎3.Dialogウィンドウの【Properties + 】をクリックし、
【Isosurfaces】をクリックし、Isosurface level: の値を、
例えば0.02a0-3など、小さい値にして、
【Apply】をクリックします。

この値を小さくすればするほど、等電子密度表面の拡がりは大きく表示されます。

この値を大きくすればするほど、等電子密度表面の拡がりは小さく表示されます。
◎4.引き続きIsosurfacesウィンドウで、作業します。

Surface colorizationの【Load file】をクリックし、
ファイル名(N): で、POT3D.scaを選んで【開く(O)】をクリックします。

□ Colorize

の□をクリックして“レ”の印を付け、【Apply】をクリックします。

Graphics: CHG3D.scaウィンドウを見ると、
等電子密度表面上に静電ポテンシャルの大小に応じた彩色が施されているはずです。

静電ポテンシャルの大小に応じて、
赤〜橙〜黄〜黄緑〜緑〜青ときれいに彩色されている状態が理想的です。

Surface colorizationのScale: は最初0.5になっていますが、
この値を例えば0.4, 0.3, 0.2と小さくしてみたり、逆に0.6, 0.7, 0.8と大きくしてみるなどして、
ちょうど赤〜橙〜黄〜黄緑〜緑〜青とバランスよく彩色されるScale値を探してください。

なお、Scale: の値を変えたときは、
その都度【Apply】ボタンをクリックしてください。
◎5.もし、この等電子密度表面上の静電ポテンシャルの図に、
VICSの分子モデル図を重ねたい場合は、引き続きIsosurfacesウィンドウで、作業します。

Opacity (%): 100
となっている箇所が右下の欄にありますので、これを例えば、
Opacity (%): 50
として、【Apply】をクリックします。
そうしますと、50 %ぐらい透明に透けて見えるようになります。

【OK】をクリックしてIsosurfacesウィンドウを閉じます。

VEND: Menu の【VICS】をクリックし、
ファイルの場所(I): にc:\dvxa\calc\○○を選んで、
VICSで保存したVICSファイル(例えばcomplex.vcs)を選択、
【開く(O)】をクリックします。

そうしますと、Dialogウィンドウに
□Show model
という行が追加されますので、□Show modelの□をクリックして“レ”を付けてやります。

この状態で、ボール&スティック表示の分子モデルが表示されているかと思います。
さらに、Dialogウィンドウの【Model】をクリックし、
例えばModelの欄の
◎Ball-and-stick
○Stick
を、
○Ball-and-stick
◎Stick
にしてやって【OK】をクリックすれば、分子モデルはスティック表示になります。
◎6.c04dで指定した描画範囲(例えば20a0×20a0×20a0)が
Unit cellとして白い白線で表示されているかと思いますが、
もしこの白い白線が不要でしたら、
Dialogウィンドウの【Unit cell】をクリックし、
□Show unit cell edgesの選択をはずしてやれば、消すことができます。
◎7.Graphicsウィンドウをマウスの左ドラッグで好きな位置に回転させてやり、
VEND: Menuの【Export】をクリックし、
Export Imageウィンドウで適当な名前をつけて

ファイルの種類(T):
BMP (*.bmp)
EPS (*.eps)
JPEG (*.jpg)
JPEG 2000 (*.jp2)
PPM (*.ppm)
RAW (*.raw)
RGB (*.rgb)
TGA (*.tga)
TIFF (*.tif)
EPS (vector data) (*.eps)
の中から、適当なファイル書式を選択して保存してやれば、
各種お絵かきソフト、ワープロ、プレゼンテーションソフト
等に持っていけるかと思います。

以上の操作で描いた、ある錯体([Cd{S4Mo3(Hnta)3}2]4-)の
等電子密度表面における静電ポテンシャルの図を以下に示します。


【等電子密度表面における静電ポテンシャルの図】
(電子密度のIsosurface level: 0.03a0-3, 静電ポテンシャルのSurface Colorization Scale: 0.5)
※図をクリックすると大きな画像をご覧いただけます【268 KB】

この錯体([Cd{S4Mo3(Hnta)3}2]4-)の等電子密度表面における静電ポテンシャルの図を、
もっと違った方向から眺めたJPEG画像はこちらでご覧いただけます。

[S size, Animated GIF, 111 KB]
[M size, Animated GIF, 1.44 MB]
[L size, Animated GIF, 3.22 MB]
さらに、この錯体([Cd{S4Mo3(Hnta)3}2]4-)の等電子密度表面における
静電ポテンシャルの図を、GIFアニメーションにして掲載いたしました。
(※上の画像をクリックすると、GIFアニメーション画像をご覧いただけます。)
ファイルサイズが大きいので、ご注意ください。

[S size, Animated GIF, 175 KB]
[M size, Animated GIF, 2.07 MB]
[L size, Animated GIF, 4.40 MB]
またこちらは別の錯体([Mo3FeS4(H2O)10]4+)の等電子密度表面における
静電ポテンシャルの図です。GIFアニメーションにして掲載いたしました。
(※上の画像をクリックすると、GIFアニメーション画像をご覧いただけます。)
ファイルサイズが大きいので、ご注意ください。

さらにこちらは、ある錯体([Mo3S4(H2O)9]4+)の
等電子密度表面における静電ポテンシャルの図の作成過程をGIFアニメーションにしたものです。
どの等電子密度表面で絵を描くか、また静電ポテンシャルで彩色する際の{Scale}をいくらにしたらよいのか、
いろいろ試行錯誤して調節する過程が記録されています(上で紹介している2種の錯体のGIFアニメーションでも、
同様の作業過程が記録されております)。
[Animated GIF, 1.43 MB]←クリックすると始まります。
 ※ファイルサイズが 1.43 MB もありますので、ご注意ください!

こうしてでき上がった等電子密度表面における静電ポテンシャルの図を
回転させた様子をGIFアニメーションで記録しました。
[Animated GIF, 2.24 MB]←クリックすると始まります。
 ※ファイルサイズが 2.24 MB もありますので、ご注意ください!

上の2つのGIFアニメーションを連結したものがこちらです。
[Animated GIF, 3.18 MB]←クリックすると始まります。
 ※ファイルサイズが 3.18 MB もありますので、ご注意ください!

さらにいろいろな錯体の等電子密度表面における静電ポテンシャルの図については、
DV-Xα+VENUSによる錯体の電子状態ギャラリーの各ページをご参照ください。
◎8.【補足】VENUSで美しい“等電子密度表面における静電ポテンシャルの図”を作成するためには、時間はかかりますが、contrdでCHG3D.scaとPOT3D.scaを作成するときに、c04dで指定するメッシュ数を 251 x 251 x 251 とすることをお勧めいたします。

c04dの1行目でメッシュの数を指定します。



これがc04dを251 x 251 x 251 とした場合の例です。

計算環境によって異なりますが、計算時間は数十分〜数時間程度(モデルの大きさ、PC速度によります)、
でき上がるCHG3D.scaとPOT3D.scaはそれぞれ214 MB程度となります
(電子密度と静電ポテンシャルに加えて、さらに分子軌道を出力している場合は、
それらのファイルも同サイズでそれぞれ作成されます)。

VENUSのVENDにおいて、電子密度の等値表面に対しては、スムージングをかけずにそのままの状態で静電ポテンシャルファイルを読み込み、彩色してください。電子密度表面、静電ポテンシャル表面、波動関数表面をそれぞれ単独で描くときにはVENDのスムージング機能は便利ですが、等電子密度表面を静電ポテンシャルで彩色する場合に限り、スムージングはかけないほうが、等電子密度表面は美しく彩色されます。
◎9.【補足】VENDで描く等電子密度表面のIsosurface levelは、VICSのボール&スティックモデルを同時表示しておき、最初は等電子密度表面のIsosurface levelを1.0ぐらいから始めて、結合のスティックが等電子密度表面で覆われて見えなくなる程度まで等電子密度表面のIsosurface levelを小さくしていく(見えなくなってから、さらにもう少しだけ等電子密度表面のIsosurface levelを小さくする)と、良い塩梅に等電子密度表面が描けると思います。静電ポテンシャルで彩色する際の{Scale}は、最初1.0や3.0など(最大10.0)を入れて、全体(もしくは部分)が真っ赤(もしくは真っ青)になる{Scale}を探し、次に0.1や0.01など、全体(もしくは部分)が真っ青(もしくは真っ赤)になる{Scale}を探し、その間のちょうど赤〜黄〜緑〜青と色バランスよく彩色される{Scale}を探すと良いと思います。うまく彩色できれば、化学的イメージにピッタリの(電気陰性度[electronegativity]の大小関係の通りの)彩色画像を得ることができると思います。研究者が錯体の電子状態を俯瞰するにも、学生のみなさんが錯体における金属・架橋原子・配位子などの電気陰性度をイメージするためにも、このVENUSで描く等電子密度表面における静電ポテンシャルの図は一目瞭然で、その美しさと情報量に感動を覚えます。錯体(有機金属分子)のCIFさえあれば(原子の座標データさえあれば)、DV-Xα+contrd+VENUSという作業を経て、論文や学会発表で読者や聴衆に対して力強い説得力のある図をお使いいただけるのではないかと思います。

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岡山理科大学 理学部 化学科 坂根弦太

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